1人1ページ出版の可能性

1人1ページ出版の可能性

幕府を作りたいのですがとは - はてなダイアリー

はてな人力検索」が書籍化されました。「萌え理論Blog」のタイトルバナーを描いて頂いた、id:km37さんが表紙のイラストを描かれています。この本の特徴は、CGM型出版とでもいうか、大勢のユーザから少しずつ文章を集めて、モザイク的に一冊の本にしているところです。

人力検索はてな - 質問一覧 「萌理賞」を含む質問

いっぽう、このブログでは「萌理賞」という催しを開いています。人力検索は個人の質問と回答のためのサービスなのですが、視点を変えて創作の場として利用したものです。そして、はてな運営が人力検索全体を書籍化したように、個人でも書籍化できないものかと考えました。

萌え理論Blog - 未来同人アマゾンII

去年から注目しているAmazonの「e託」というシステムがあって、それを利用すれば個人でもAmazonの流通に載せることができます。これとCGM型出版を組み合わせると、新たな出版形態が可能だと見ています。

まとめると、つまりこうです。今までの個人の自費出版なら、何百枚も原稿を書いて、百万円とか出して出版しても、実際の書店にはあまり並ばず全然売れずに、終わってしまいます。しかし、上の方法で、100人集まれば、1人1ページ書くだけ、しかも無料で出版*1できてしまいます。

書店流通ではなくAmazon流通ですが、100人の著者が自分のブログにアフィリエイトを貼って、書きましたよと宣伝してくれれば、ロングテールが狙えるから、マイナー本は一瞬で店頭から消える書店流通より、かえって有利でしょう。集合知的というかネオエクスデス的というか、個人的に面白い流れだと感じています。

萌理賞」は「萌理文庫」に生まれ変われるか

しかしもちろん、かなりハードルが低くなったとはいえ、最低限売れなければ絵に描いた餅に過ぎません。すごく大雑把に見積もって、1冊1000円として、一年で最低限100冊*2は売れないと赤字確定だと見ているのですが、その損益分岐点を超えられるかというと、無理っぽいかな…。

コミケで健全創作が100部さばくのと比較したときに、Amazonは年中無休なのでいつでもブログで紹介できる利点はあるけど、それでもやはり、人が集まっていないから、一桁台に留まりそうな予感がします。書いた100人が全員買ってくれれば100冊なんですけどね。ただ、赤字でも出して既成事実を作ることで、次回の賞に人が集まる効果はあるかもしれません。

問題はそれだけではなくて、賞の開催時に「書籍化する権利を有します」とは書いていなかったので、100人いれば100人に書籍化していいかどうか確認しないといけません。次回の賞から書籍化しようとすると今度は文章量が溜まるのに一年位は掛かります。また、100編の文章を印刷可能な段階まで編集しないといけないので、膨大な時間が掛かるでしょう。

人は、自分が1ページ書いたものを出版したいかどうか、買いたいかどうか、というのが最大の焦点です。そこで、書いたときに出版したいと思っても、出版したあとに買いたいと思うかどうか。とにかく、一人で盛り上がっても仕様がないことですが、1人1ページ書いて出版という、このアイディアはいかがでしょうか?

*1:費用は編集する者、この場合私が負担し、その代わり印税も発生しない、という形態を想定している

*2:まず印刷費が掛かる。そしてe託は、管理費手数料の他に、ISBNを取得する必要があるのと、最初の内は一冊しか在庫を置かせてくれないので、著者が送料を負担して一冊ずつ送らないといけない

ラノベ『ベクシル~my winding road~』

ベクシル~my winding road~ (ガガガ文庫)

ベクシル~my winding road~ (ガガガ文庫)

21世紀後半のロサンゼルス。19歳の少女ベクシルは米国特殊部隊SWORDの訓練生。その卓越した任務遂行能力と、鼻っ柱の強さで、「教官殺し」の異名を持つ。そんなベクシルの前に現れたのは、組織に奉ずることに最上の価値を認める若き教官、レオン。この“水と油”の二人が追う事件の先に、ハイテク鎖国を実施し、国際社会から完全に孤立した、謎のロボット産業大国・日本の影が立ちはだかる

http://www.gagaga-lululu.jp/gagaga/lineup/200707.html#04

今夏公開映画『ベクシル2077 日本鎖国』の、ノベライズ版オリジナルストーリー。イラストは緒方剛志で、緊張感のある世界観に合っているだろう*1

この作品の最大の焦点は、一人称の主人公に感情移入できるかどうかだろう。表紙を見ただけでは、主人公のベクシルは『攻殻機動隊』の草薙素子のようなクールで無機質な女性だと、誰もが思うだろう。ところが実は、ツンデレなのである。アクションシーンを中心にしながらも、教官のレオンに対してつっかかるツンデレベクシル、というシチュを受け入れられるかどうかが、楽しめるかどうかの境界線だ。アニメのような映像メディアを移植するときに、小説という媒体の固有性として、人称や視点の問題が現れる。個人的には、ハードボイルドでよくそうしているように、三人称にしただけで、主人公を客観視できて、読みやすくなるのではないかと思った。他の部分は、ストレートでスピード感があって読みやすい。

関連

ベクシル コンプリート・ガイド

ベクシル コンプリート・ガイド

*1:ちなみに、著者の谷崎央佳は冲方丁の弟子筋の人らしい

感想サイトが流行らない理由

文章力より営業力

今月から書評を始めた。一日一冊ペースでラノベを紹介したが、記事を書く手間も意外と大きく、結構時間が掛かる。だがアフィ的には、紹介した書籍は全然売れてない。売れたのは、本家ブログに一言も紹介なくただ広告然として貼った、「らき☆すた」のDVDと「ハルヒ」のフィギュアだった。そりゃそうだよなあ…。また、アクセスも全然増えてない。今月は萌理賞の告知が不発だったので、一番多いのは昨日のガガガ文庫の記事。はてブがついて通常の三倍アクセスが集まった。

感想サイトを流行らせたいと思ったときに、文章力より営業力というか、実は記事の良さ・面白さはあんまり関係なくて、読者の需要の大きさが重要なのかもしれない。1万部と100万部の作品では、既知の読者の分母数が違い過ぎる。それと、潜在的な読者が多いだけではなくて、ニュースサイトなどで実際の読者を連れて来てくれるか、というのは更に重要になる。なるべく隠れた佳作を紹介したいと思うんだけど、来月からは書評のスタイルを微妙に変える予定。

そんなこんなで、このブログの立て直しは順調に難航しているわけだけど、ただ、はてなスターが意外とモチベーションになった。はてブよりはてスタは気軽に付けられる。直接アクセスには関係ないけど、反応が貰えるのと無反応では全然違う。というわけで、感想サイトは流行らなくても、はてスタやWeb拍手を付けると続くかも、という話。

ラノベ『ハヤテのごとく!―Hayate the combat butler 春休みの白皇学院に、幻の三千院ナギを見た by ハヤテ』

綾崎ハヤテは、十六歳にして三千院家のお嬢様、三千院ナギに仕える執事(兼高校生)である。偶然と勘違いによって育まれたふたりのすれ違いの日々はコミックやアニメで補完してもらうとして、今は春休み。ふたりの通う白皇学院で、自習に励むナギの姿が目撃される。あのひきこもりお嬢様が!? お屋敷にこもっていたナギは、渋々ながらハヤテと様子を見に学院に向かったが……。

http://www.gagaga-lululu.jp/gagaga/lineup_hayate.html

週刊少年サンデー』で連載中・アニメ放映中の作品をノベライズした。口絵扉をはじめイラストはすべて、原作者の畑健二郎が自ら描く。軽いノリの執事ラブコメディ。

ハヤテファンなら損はない一冊。何しろ原作者自らイラストを描いているのだから。ナギのパンチラやハヤテの女装がある。これからの時代は美少年執事(メイド)か。小説の方は、ナギのドッペルゲンガーが出現し、ハヤテをあれこれ惑わすが、本当に必要としているのは誰なのか…というタイプのお話。時事ネタを織り交ぜ、軽いコメディで進行する。

ガガガ文庫のラインナップでトップクラスに売れているのは、この「ハヤテ」とロミオの「人類は衰退しました」。そうだろうな、と思いつつ、マンガ・アニメ・エロゲといった、ラノベ外勢力に押されていると感じる。

関連作品

ハヤテのごとく! 1 (少年サンデーコミックス)

ハヤテのごとく! 1 (少年サンデーコミックス)

ハヤテのごとく! 01 [DVD]

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「ガガガ文庫は衰退しました」の原因を考える

ガガガ文庫の既刊は半分くらい読んだ。「ハヤテ」と「人類は衰退しました」は売れているという話だけど、これってマンガ・アニメ・エロゲのラノベ外勢力が影響してるから、個人的には期待しているけど、少なくとも前評判ほどの勢いはないと思う。

現時点での全体的なガガガの感想を言うと、どの本も文章・構成は悪くないし発想・設定は面白いけど、キャラが弱いのではないかと感じる。ライトノベルはキャラクター小説の面があるから、キャラは重要だろう。

売れているラノベってキャラで売れていて、その分かりやすいメルクマールは、題名にキャラの名前が入った作品群だろう。「涼宮ハルヒの憂鬱」「灼眼のシャナ」「キノの旅」「ブギーポップは笑わない」「魔術師オーフェン」…。

ガガガ文庫の既刊のタイトルを見ただけでも、あんまりキャラ指向ではないみたいだと分かる。「ハヤテ」は原作付きだから少し別だけど、それが売れている。だから、キャラを立てて、「○○は俺の嫁」と言わせるのが、売れる道だろうなとは思う。ただもし、それを意図的に避けているのなら、その志は尊重したいとも思う。

ラノベ『人類は衰退しました』

人類は衰退しました (ガガガ文庫)

人類は衰退しました (ガガガ文庫)

わたしたち人類がゆるやかな衰退を迎えて、はや数世紀。すでに地球は”妖精さん”のものだったりします。平均身長10センチで3頭身、高い知能を持ち、お菓子が大好きな妖精さんたち。わたしは、そんな妖精さんと人との間を取り持つ重要な職、国際公務員の“調停官”となり、故郷のクスノキの里に帰ってきました。祖父の年齢でも現役でできる仕事なのだから、さぞや楽なことだろうとこの職を選んだわたし。さっそく妖精さんたちのもとへ挨拶に出向いたのですが……。

http://www.gagaga-lululu.jp/gagaga/lineup_suitai.html

『CROSS CHANNEL』などで知られる、エロゲシナリオライター田中ロミオが、ライトノベル界に進出した一作。緩やかに衰退する人類と、地球の次世代を担う妖精と、その架け橋になる少女の、穏やかだが賑やかな毎日を描く。イラストは童話的雰囲気に合う。

発想が面白い。和やかな展開の空気系作品だが、ほのぼのした癒しだけではない。「シムシティ」「ポピュラス」などの、神視点の人類育成計画系シミュレーションゲームのような、文明の発展を見守る面白さがある。中盤の都市誕生で驚かされた後、後半ではペーパークラフトを使って、自然成長していく「レゴブロック」的箱庭を観察する。不満点があるとすれば、戦闘や恋愛のようなドラマチックな要素が人間同士にないのと、オチが弱いことくらいか。しかしまあ空気系はそういう系統だろう。妖精たちの人工無能的なヘンテコ会話が何気なく楽しい。女性にもお勧めの作品。

第十三回萌理賞・開催告知

要項

第十三回萌理賞――

小説部門 - 400字程度。「萌理学園」が舞台です。最優秀作品には200pt進呈。
今回のテーマは「夏休み」「遊園地」「祭り」「花火」(複数選択可)です。

原作部門 - 200字程度。「萌理学園」の設定です。最優秀作品には100pt進呈。
人物・組織・場所・異能などの設定を募集します。

イラスト部門 - 「萌理学園」の設定です。最優秀作品には200pt以上進呈。
今回のテーマは「夏休み」「遊園地」「祭り」「花火」(複数選択可)です。

最大600×600(ドット絵は16×16以上、顔アイコンは100×100)の画像サイズ、
JPG・GIF・PNGいずれかの画像形式で、画像を貼るかリンクしてください。

投稿作は、「萌理Wiki」他、萌理賞関連サイトへの転載をご了承ください。
なお「萌理学園」の設定に基づく二次創作は、誰でも自由に制作可能です。

規定

  • 作品の表現は、日本の法律とはてなの規約内でお願いします。
  • 開催者から回答拒否指定を受けている場合、応募できません。
  • 募集は最長で一週間、応募者が定員に達した時点で締切です。
  • 「萌理学園」の設定以外は、オリジナル内容でお願いします。

詳細

今回のお題も「夏休み」などで、シンプルで書きやすいと思います。「遊園地」は遊園地にプールがついている、「花火」は帰省しているときに見た、など幅広く応用してください。

はてな人力検索に「はてなスター」がつけられるようになったので、お気に入りの作品に☆をつけてください。審査員が私一人で偏る懸念がずっとあったのですが、気軽なアンケート装置ができたので、はて☆すた賞を作る予定です。一作品一人のカウントで、一番星が多い作品に贈ります。

締切は来月九月二日いっぱいの予定です。それではたくさんの参加、お待ちしております。

お知らせ

「萌え理論Magazine」は、執筆者を募集しています。参加方法は、上のグループに「参加」を申し込んで頂くと、このブログで書けるようになります。こちらもお待ちしています。