ラノベ『人類は衰退しました』
- 作者: 田中ロミオ,山崎透
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2007/05/24
- メディア: 文庫
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わたしたち人類がゆるやかな衰退を迎えて、はや数世紀。すでに地球は”妖精さん”のものだったりします。平均身長10センチで3頭身、高い知能を持ち、お菓子が大好きな妖精さんたち。わたしは、そんな妖精さんと人との間を取り持つ重要な職、国際公務員の“調停官”となり、故郷のクスノキの里に帰ってきました。祖父の年齢でも現役でできる仕事なのだから、さぞや楽なことだろうとこの職を選んだわたし。さっそく妖精さんたちのもとへ挨拶に出向いたのですが……。
http://www.gagaga-lululu.jp/gagaga/lineup_suitai.html
『CROSS CHANNEL』などで知られる、エロゲシナリオライターの田中ロミオが、ライトノベル界に進出した一作。緩やかに衰退する人類と、地球の次世代を担う妖精と、その架け橋になる少女の、穏やかだが賑やかな毎日を描く。イラストは童話的雰囲気に合う。
発想が面白い。和やかな展開の空気系作品だが、ほのぼのした癒しだけではない。「シムシティ」「ポピュラス」などの、神視点の人類育成計画系シミュレーションゲームのような、文明の発展を見守る面白さがある。中盤の都市誕生で驚かされた後、後半ではペーパークラフトを使って、自然成長していく「レゴブロック」的箱庭を観察する。不満点があるとすれば、戦闘や恋愛のようなドラマチックな要素が人間同士にないのと、オチが弱いことくらいか。しかしまあ空気系はそういう系統だろう。妖精たちの人工無能的なヘンテコ会話が何気なく楽しい。女性にもお勧めの作品。