ラノベ『人類は衰退しました』

人類は衰退しました (ガガガ文庫)

人類は衰退しました (ガガガ文庫)

わたしたち人類がゆるやかな衰退を迎えて、はや数世紀。すでに地球は”妖精さん”のものだったりします。平均身長10センチで3頭身、高い知能を持ち、お菓子が大好きな妖精さんたち。わたしは、そんな妖精さんと人との間を取り持つ重要な職、国際公務員の“調停官”となり、故郷のクスノキの里に帰ってきました。祖父の年齢でも現役でできる仕事なのだから、さぞや楽なことだろうとこの職を選んだわたし。さっそく妖精さんたちのもとへ挨拶に出向いたのですが……。

http://www.gagaga-lululu.jp/gagaga/lineup_suitai.html

『CROSS CHANNEL』などで知られる、エロゲシナリオライター田中ロミオが、ライトノベル界に進出した一作。緩やかに衰退する人類と、地球の次世代を担う妖精と、その架け橋になる少女の、穏やかだが賑やかな毎日を描く。イラストは童話的雰囲気に合う。

発想が面白い。和やかな展開の空気系作品だが、ほのぼのした癒しだけではない。「シムシティ」「ポピュラス」などの、神視点の人類育成計画系シミュレーションゲームのような、文明の発展を見守る面白さがある。中盤の都市誕生で驚かされた後、後半ではペーパークラフトを使って、自然成長していく「レゴブロック」的箱庭を観察する。不満点があるとすれば、戦闘や恋愛のようなドラマチックな要素が人間同士にないのと、オチが弱いことくらいか。しかしまあ空気系はそういう系統だろう。妖精たちの人工無能的なヘンテコ会話が何気なく楽しい。女性にもお勧めの作品。