ラノベ『ベクシル~my winding road~』

ベクシル~my winding road~ (ガガガ文庫)

ベクシル~my winding road~ (ガガガ文庫)

21世紀後半のロサンゼルス。19歳の少女ベクシルは米国特殊部隊SWORDの訓練生。その卓越した任務遂行能力と、鼻っ柱の強さで、「教官殺し」の異名を持つ。そんなベクシルの前に現れたのは、組織に奉ずることに最上の価値を認める若き教官、レオン。この“水と油”の二人が追う事件の先に、ハイテク鎖国を実施し、国際社会から完全に孤立した、謎のロボット産業大国・日本の影が立ちはだかる

http://www.gagaga-lululu.jp/gagaga/lineup/200707.html#04

今夏公開映画『ベクシル2077 日本鎖国』の、ノベライズ版オリジナルストーリー。イラストは緒方剛志で、緊張感のある世界観に合っているだろう*1

この作品の最大の焦点は、一人称の主人公に感情移入できるかどうかだろう。表紙を見ただけでは、主人公のベクシルは『攻殻機動隊』の草薙素子のようなクールで無機質な女性だと、誰もが思うだろう。ところが実は、ツンデレなのである。アクションシーンを中心にしながらも、教官のレオンに対してつっかかるツンデレベクシル、というシチュを受け入れられるかどうかが、楽しめるかどうかの境界線だ。アニメのような映像メディアを移植するときに、小説という媒体の固有性として、人称や視点の問題が現れる。個人的には、ハードボイルドでよくそうしているように、三人称にしただけで、主人公を客観視できて、読みやすくなるのではないかと思った。他の部分は、ストレートでスピード感があって読みやすい。

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*1:ちなみに、著者の谷崎央佳は冲方丁の弟子筋の人らしい