ラノベ『おと×まほ』

おと×まほ (GA文庫)

おと×まほ (GA文庫)

 平凡な町でごくごく普通に暮らす高校生・白姫彼方は、ある日母から魔法少女にされてしまった。いやがる彼方だったが、なりゆきで変身して敵と戦うことになってしまう。

 クラスメイトの情報屋こと明日野丈や無邪気な委員長に正体がばれることを恐れながら、だぶだぶのYシャツにミニスカート(なかにはスパッツを装着済み)といったいでたちで街や学校に発生する敵=ノイズと戦う彼方。ヒトの言葉をしゃべるようになった猫・モエルやもうひとりの魔法少女・グレイスと力を合わせて、今日も今日とて悪を倒す!?

http://ga.sbcr.jp/novel/otomaho/index.html

魔法少女(少年)ものの萌えコメディ。おそらくタイトルは「男の子×魔法少女」の意味。美少年が女装して魔法少女するという、最初の設定を受け入れられるかどうかで、読者の賛否は分かれてしまうだろうが、おとこの娘に萌えられるなら問題ない。

幼い母親の近親相姦的愛情を始めとして、委員長やサポータの猫もそうだし、校内美少女ランキングで一位になるくらいだから、主人公の美少年は周囲から過剰な愛情を注がれている。だいたい美少年ものはそういう構造があるが、なぜそうなるかと言えば、(男の読者にとって)美少年は(過去の)自己の投影であり、このナルシシズムが無制限の甘さの呼び水になるのである。

作品中で白眉なのは、委員長の少女が、唐突に主人公の耳を口に含む場面で、公的な場所なのに、なんと舌まで入れようとしている。それも性的な意味ではなくて、純粋に親愛の情でやっている感じなので、ほとんど幻想的な光景だ。スパッツを履かせたのも、羞恥心の過剰さなどを醸し出していて、良いのではないかと思う。契約を破ると本当に女の子になるという設定も良い。ただ、主人公がチヤホヤされ過ぎているので、もう一人のドジッ娘魔法少女の存在感が薄い。また、戦闘はオマケというよりも、それがあることでテンポが悪くなった。イラストは「とらドラ」と同じ作者だが、軽く薄い感じがマッチしている。