ラノベ『学園カゲキ!』

学園カゲキ! (ガガガ文庫 や 1-1)

学園カゲキ! (ガガガ文庫 や 1-1)

映画振興を目的につくられた実験都市「歌劇市」。ここには、未来の大スターを夢見る少年少女が通う高校「私立歌劇学園」がある。学園の生徒が出演するテレビドラマ「学園カゲキ!」は、全国に放送されて大人気。新入生・会澤拓海は誤って「学園カゲキ!」撮影現場に乱入、その場でドラマのヒロインである美少女・橘九月にはり倒されてしまう。これがきっかけで喧嘩友達となった二人の仲はやがて恋人へと発展していくが、その裏には…。

http://gagaga-lululu.jp/gagaga/keika.html

第一回小学館ライトノベル大賞・ガガガ賞受賞作。歌劇専門の学園都市を舞台に、一癖も二癖もある役者たちが繰り広げる、学園ラブコメディ。

登場人物が多く、賑やかなラブコメ。演劇的な過剰さも、元気があっていいだろう。そこら中で演劇を繰り広げる学園(都市)という設定は、潰しが効いて面白いと思う。特に大きなきっかけがなく主人公とヒロインが仲良くなっているが、現実の恋愛はそんなものかもしれない。いちいち小芝居が多く、「メタとベタとの区別がつきません」的な楽しみ方をする作品だろう。

物語の最後に大どんでん返しが待ちかまえているのだが…(オチは注に→*1 )、慎重な読み手ならオチがすぐ割れてしまう。また、実は同賞の『マージナル』より倒錯的な印象が残る。これは、物語内で起こる事件のカゲキさとは別に、それを物語外から見る読者の次元において、窃視症的な趣味を押し付けられたように感じるからだ。そういう構造的問題をクリアしていれば、大賞でも不思議ではないと思う。

ラノベはラフなイラストが多いが、この作品のイラストは、(表紙と違い本文中の挿絵は少し変わったセンスだが)トーンを駆使して丁寧に描かれており、キスシーンなどの山場を盛り上げている。

*1:物語の構造は『トゥルーマンショー』。ここに書いてもあまりネタバレ隠しになっていないかもしれない