ラノベ『ギロチンマシン中村奈々子―義務教育編』

ギロチンマシン中村奈々子―義務教育編 (徳間デュアル文庫)

ギロチンマシン中村奈々子―義務教育編 (徳間デュアル文庫)

右手は禍々しい刃、左手は得体のしれない機械──三つ編みにセーラー服、神々しいまでに美しい少女の名は中村奈々子。彼女は、ロボットが人類を滅ぼすために作った〈学園〉を守る最強の処刑人。で、僕は、あらゆるロボットの始祖〈チェシャ・キャット〉を倒すために〈学園〉に潜入した人間様の兵士……のはずなんだけど、なんですかこのラブコメ展開は! 日日日初の書下し萌え燃えSF学園アクションラブコメディ登場!

http://www.tokuma.co.jp/edge/03kikan.html#_d0610a

去年は月産一冊ペースという、人気作家「日日日(あきら)」の、渾身書き下ろしギロチンラブコメディ。

キャラが非常に魅力的で良い。ロボットと人間の違いを巡る哲学的考察や、学校制度への社会風刺のモチーフ…とかは薄っぺらいし、ラノベ的にもわりとどうでもよくて、身体欠損した少女(主役二人の両腕がなく、機械化されている)や、罵倒するサドロリ幼女やそのM字開脚が、メインの見所だろう。ロボットだらけの世界観なので、身体的・精神的な欠落が距離感を生まないどころか、親近感さらに性的魅力に反転するところは、設定の美味しさを引き出している。ラブコメのパターンとしては、強い戦闘少女に好かれて嬉しいが反面少し怖い的な展開。

不満点も書く。一つ目は、巻き込まれ型の主人公が、ただ巻き込まれている内に、強い少女たちがいつの間にか、物語を勝手に進展させていく印象があること。つまり物語が自動で進む感じ。二つ目は、常にはぐらかしているような物語の進め方・文章の書き方のせいで、話の筋をつかみにくいこと。つまり文章は上手いが血が通っていない。だが、作者自身が後書きで読みにくいだろうと書いてしまっているので、これは意図的なものか。主題が機械なので、このギクシャクした文体もアリかもしれない。イラストは無機質な明るさが、本作の雰囲気に大変マッチしていた。*1

*1:細かい指摘なので注に回すが、登場人物の顔が同じ、というSF的で非人間的な設定も、イラストの絵柄の問題と区別がつかず、あまり不気味さを感じなかった。もっとも、何となく似てる、でいいかもしれない