ラノベ『Re:ALIVE 1―戦争のシカタ (1)』

Re:ALIVE 1―戦争のシカタ (1) (ガガガ文庫)

Re:ALIVE 1―戦争のシカタ (1) (ガガガ文庫)

「戦死者ゼロ。高校生の俺にとって、形骸化した戦争はテレビの中のリアルでしかなかった。あいつから銃口を向けられる、そのときまでは――」
拓真颯は2年前の事故で右目の視力と父親を失った。無愛想な風貌とあいまって、軽音部でつるんでいる璃奈、太一、龍彦以外とは、あまりつきあいを持っていない。そんな彼が最近気になっているのが、同級生の菜月カナデ。ある晩、菜月に公園に呼び出された颯は、太一に似た顔の男が、血まみれの女性の死体を抱えている姿を見る――。

第1回小学館ライトノベル大賞・佳作。戦時下の学園青春物。全体の枠組としては現代学園異能が当てはまるだろうか。異能と限定戦争の組み合わせ。続編に続く終わり方をしている。

昨日の「アキカン」のようにツッコミどころが多い楽しい作品は書きやすいのだが、こういう優等生っぽい作品はかえって書評が書きにくい。限定戦争のモチーフも、現代は日常と非日常の境界が曖昧化して、何となくバトルロワイヤルだよね、という感じで、時代を読もうとしている気がするし、「ヘキサゴン」「FLAG」といったゲーム的設定をしたり、最初に濡れ場を持ってきて最後とサンドイッチの構成にしたり、それなりに計算された作品なのだろう。主人公の瞳や髪が銀色だったり、章の冒頭に思わせ振りなポエムがあったりするのは、少し同人的なナルシスティックな感覚だが、まあ趣味の問題だろう。

それでは何が不満かというと、切実な感覚が欠如していて、シミュレーション的な戦争が起こっている印象なのだ。いや、むしろメディアの中でしか経験できないのが現代の戦争なのだ、などと言うことも可能だが、それにしても、読者に強烈な印象を付ける何かが欲しい。このままだと、冒頭の裸で誘惑するシーンが一番記憶に残ってしまう*1。新人賞なのに続編に続くというのも凄いが、世界観をはっきりさせずに、次回持ち越しにしてしまうのも煮え切らない。どこが悪いということはないけど、全体的に中途半端な気がする。イラストは爽やか。途中にパンチラがある。

*1:私がエロイからではなくて