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「チバ?」
「うん。いま帰った。これ、家電?」
「そう」
「怒られない?」
「知らない」
「ケータイ、わからないんだ?」
「うん、どうしよ」
「アイリ、泣いてるの?」
「………」
「アイリ?」
「だってどうしたらいいか……」
「………」
「友だちとメール中だったんだよ!」
「友だち? 一緒にいた子?」
「ちがう子」
「その子のアドレスは?」
「わかんない」
「僕のアドレスはなんでわかったの?」
「チバ、名前のまんまじゃん」
「そだっけ?」
「そだよ」
「あれ? じゃあ、この番号は?」
「さっき電話くれたじゃん」
「あ、そか」
「チバ、やっぱアホだよね」
「失礼ですよ?」
「いいよ、チバだから」
「意味わかんないよ?」
「いいの」
「ケータイにかけてみた?」
「うん。切れてるみたい」
「切れてるんだ。
 じゃあ、拾われたわけじゃないのかな?
 バッテリーあった?」
「そんなのわかんないよ」
「どれくらい使ってた?」
「まだ三時くらいだったから、たぶんあったと思う」
「そっか」
「このまま出てこなかったらどうしよ……」
「出てくるよ」
「わかんないじゃん!」
「………」
「ごめん。もうやだ……」
「ケータイ、ないと不安?」
「当たり前じゃん!」
「………」
「誰とも連絡なくて、すごくさみしいよ!
 みんなから捨てられた気分になる!
 あたしがどんなに不安か誰もわかってくれない!
 ケータイがないとそれを言うことも出来ないよ!」
「………」
「………」
「チバがいるよ?」
「でも……!」
「………」
「………」
「アイリ?」
「そうじゃないの。
 ただ不安なの。わかんないの。
 あたし、おかしいのかなぁ?
 ケータイないと、生きてけないよ……」