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「星?」
「そうだよ。テレビ見なかった?
 なんとか流星群が来てるんだよ」
「知らないよ。見えるの?」
「ぶっちゃけよくわかんない」
「だめじゃん」
「いいんだよ。アイリと話しながら星見れるだけで」
「あたし見てないよ?」
「見て」
「え〜、車だからなぁ。あんまよく見えない」
「窓開けたら?」
「あっついじゃん」
「あっついけど!
 まぁいいや」
「うそだよ。窓開けた。
 曇ってるよ?」
「曇ってるね」
「だめじゃん」
「だめじゃないよ。
 見えるかもしれないじゃん」
「えー? 雲しか見えないよ」
「今どこにいるの?」
「車」
「車でどこにいるの?」
桜木町行くの。
 今日花火だから」
「あ、そういえば音が聞こえるかも」
「チバは行かないの?」
「………」
「行かないんだ?」
「ほっといて!」
「チバがキレたよ。さみしいの?」
「星見てるの」
「チバ、オタクなんだね」
「………」
「チバ?」
「………」
「チバ傷ついた?」
「さぁね」
「ごめん」
「今日は誰とおでかけですか?」
「友だち」
「メル友?」
「まあ、そうかな」
「アイリ、ほんとメル友いっぱいいるね〜」
「そうかな? ふつうじゃない?」
「普通じゃないでしょ」
「わかんない。
 ……だって、花火見たくない?」
「親は?」
「知らない」
「家にいなかったの?」
「今日まだ帰ってないから。
 でも、親と花火なんて行ったことないし」
「ないんだ。
 てか、七時だよ? だいじょぶ?」
「知らない」
「また怒られるよ?」
「いいじゃん! チバには関係ないよ!」