NScripter入門以前

NScripter吉里吉里

ノベルスクリプトは数え切れないほど公開されていますが、やはり有力なのはNScripter吉里吉里になるでしょう。TYPE-MOONが『月姫』をNScripterで開発し、『Fate/Stay night』を吉里吉里(少し改造したもの)で開発したのをはじめとして、企業もノベル型のエロゲ開発によく使っています。だから、プログラム部分において、市販レベルのノベルゲームを作ることも不可能ではありません。


よほどのことがない限り、この二つのスクリプトで用は足りると思います。プログラム言語で一からノベルエンジンを作っても十中八九、車輪の再発明になるでしょう。また他のノベルスクリプトにはアリスソフトのSystem3.Xなど色々ありますが、使いこなすのが難しかったりして、一般に流通するには至りませんでした。ただし、例えばFLASHのASで書けばブラウザで遊べるという強みはあります。以下では、この代表的な二つのノベルスクリプトを更に詳しく解説します。

比較表 難易度 自由度
NScripter
吉里吉里


上図のように、習得が簡易なのがNScripterで、拡張性に優れているのが吉里吉里です。吉里吉里から説明します。

吉里吉里

吉里吉里と呼ばれているものの実体は、吉里吉里・KAG・TJSという三位一体の組み合わせです。TJSというスクリプト言語があって、その言語で記述されたノベルゲーム制作のためのフレームワークがKAGで、吉里吉里は実行環境です。そのように分けることによって、機能を拡張したい人はTJSのレベルで書くことができ、逆にそれが面倒な人はTJSを書かなくても動かせますから、拡張性と簡易性を両立しています。


TJSまで視野に入れれば、非リアルタイムのゲームがほとんど制作できるポテンシャルを、吉里吉里は持っています。NScripterと異なり、オブジェクト指向をサポートした言語なので、記述性が高く、オリジナルなシステムのゲーム制作に向いています。ただし、習得にもそれなりの時間が掛かります。また少し重いです。

NScripter

一方、NScripterは、言語の構文は原始的ですが、手軽に動かせるのが魅力です。最低限、インタプリタの実行エンジンのファイルが一つとテキストファイルが一つあれば動きます。動作も軽いです。超人気同人ゲーム『ひぐらしのなく頃に』もNScripterで制作されています。


どっちを使うか迷った場合、古典的なフラグ立てと選択肢のノベルゲームで、オプションに凝らないのであれば、NScripterで不自由することはありません。簡単な育成SLG位までは困らないでしょう。プログラム部分が多いHEX型の戦略SLGなんかを作ろうと思ったら、記述の効率が落ちるかもしれません。まあ例えば「OOPでなければ組む気がしない」という人は最初から吉里吉里を使うでしょうから、迷ったらNScripterからはじめていいでしょう。


書き方は、NScripterの本体と同じフォルダにテキストファイルを置き、そこにスクリプトを書きます。スクリプトの書き方は、本編の文章はそのまま(ただし全角文字のみ)書き、後は改行や選択肢や画像を制御する命令を半角文字で書きます。


平易なドキュメント(吉里吉里の解説サイトは分かりにくいと評判だった)が存在するというのも初学者に有利です。前回は主に吉里吉里の解説書が紹介されていたので、以下ではNScripterの解説書を挙げておきます。


NScripterオフィシャルガイド

NScripterオフィシャルガイド

とにかく一から手順を踏んで丁寧に書いているので、はじめてNScripter、のみならず、はじめてスクリプト言語自体に触れる人に向いています。内部にカラーイラストはないので、萌え絵目当てで買うと期待外れかもしれません。サンプルCDが付属しています。


あどばんすどNScripterオフィシャルガイド

あどばんすどNScripterオフィシャルガイド

前冊より内容を詳しく掘り下げています。市販のノベルゲーム並のインターフェイスが実現できるレベルのスクリプトを学びます(絵など素材のクオリティは別の話)。といっても、本格的なプログラムを組んだことがある人なら、この本でも簡単過ぎるでしょう。基本的に文系向けです。もっともそういう人でも、巻末のリファレンスが前の本より充実しているので、実際の制作で役に立つでしょう。


Nscripterではじめる ノベルゲーム制作

Nscripterではじめる ノベルゲーム制作

上二冊ではあくまで監修だった、NScripterの制作者自らが筆を取っています(プログラム編)。といっても難解ではなく、ゲーム制作全体の説明をバランスよくしています。前の二冊に比べるとやや薄い印象もありますが、プロのエロゲシナリオライターでもある制作者がノウハウを書いているので、参考になるでしょう。