バブル経済の破綻から見た美少女ゲームの四類型

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なおここでの「美少女ゲーム」とは、非リアルタイムのテキストアドベンチャーゲームを主な形式とした成人向けコンピュータゲームの一ジャンルのことで、ポルノグラフィックな表現を含むものを指します。

バブル経済の破綻から見た美少女ゲームの四類型」(初出 2005年12月16日)

分類
  • 「ハードコア」
    • 昨日までの幸せは幻想だった(バブル経済の崩壊)
    • 幸せではない(幸福感の否定)
    • 破滅
    • 支配
  • 「ナンセンス」
    • しかし、人は幻想でも幸せになれる(バブル経済の回顧)
    • 幸せかもしれない(不確実な幸福感の享受)
    • 享楽
    • 依存
  • 「ナラティヴ」
    • ただ、幸せな幻想は長く続かない(バブル経済の反省)
    • 幸せになりきれない(幸福感の不確実性の自覚)
    • 青春
    • 承認
  • メタフィクション
    • わたしたちの幸せは幻想である(バブル経済の克服)
    • 幸せになりきれないことを知っている(「幸福感の不確実性の自覚」の自覚)
    • 超越
    • 啓蒙
解説

それぞれ五つの項目がありますが、上から

  • 「分類名」
    • 社会状況
    • 現実感覚
    • テーマ
    • 人間関係

となっています。ちなみに「ナラティヴ」とは「物語」のことです。
美少女ゲームの実作が、本格的に始まったのは1989年のことで、直後に日本では「バブル経済の破綻」がありました。90年代の日本は慢性的な不況下にあり、美少女ゲームはその時期に最も盛んに作られたのです。パーソナルコンピュータという「富の象徴」をプラットホームとしたこのジャンルは、いわばバブル経済の落とし子でもありました。それゆえ不況下でも、かつて好況下にあったときの日本人の現実感覚と無縁ではいられなかったと思われます。この分類は、そのような社会状況から美少女ゲームという特異なジャンルを捉え直す試みです。

作品
  • 「ハードコア」

実際は分類の境界上にある作品が多く、おそらく現在では「ナンセンス」と「ナラティヴ」の中間形態が最も多いと思われます。なお、明確に「メタフィクション」と言える作品は少ないので、挙げる数もほかの半分にしておきました。
時系列で整理すれば、まず1985年の「天使たちの午後」以前は「ハードコア」と「ナンセンス」の中間形態が多く、ロリコンが主な興味の対象でした。1989年に「ナンセンス」の作品が大量に出現して、「ナラティヴ」の要素を兼ねながらジャンルの基礎を築きます。90年代前半は、PCの性能の向上とともにCGの精度が上がって、陰影やスペルマの描写が巧みになった結果、「ハードコア」の作品が商品として有力になりました。90年代半ばのLeafビジュアルノベル登場以降は「ナラティヴ」の作品が主流になっていきます。そこからごく少数の「メタフィクション」の作品が生まれ、現在に至るのです。