冷凍抱きメイドさん

遂に念願の全自動冷凍抱きメイドさんをゲットしたぞ!!
暑い日の心の恋人、疲れたからだをひんやりと冷やしてくれる癒し系グッズ。一人に一台、過酷な大都会をサバイバルするあなたに心強いパートナー。
最近は抱きメイドさんを抱えながら通勤するメイドさん通勤なるものも流行っている。マイブームだと思っていたのだが人間考えることは皆同じようだ。おかげで乗車率がメイドさんの分だけ大幅アップするという逸話がまことしやかに囁かれ、“JR殺し”の二つ名を持つに至る彼女たち全自動冷凍抱きメイドさん。先日はとうとうメイドさんをめぐって彼女に刺し殺されたという笑うに笑えない悲劇まで新聞をにぎわせて、「ニートが増えているのはメイドさんのせいだ!」との声明が経団連の会長から発表されるほど猛暑のメイドさんはぼくたち人類の魂を支配していた。

ラノベ『らき☆すた殺人事件』

らき☆すた―らき☆すた殺人事件 (角川スニーカー文庫)

らき☆すた―らき☆すた殺人事件 (角川スニーカー文庫)

ゆるゆると日常。ゆるゆると起きる連続殺人。ゆるゆると見つからない謎。果たして犯人は!? 『ポケロリ』の竹井10日が新感覚で描く『らき☆すた』ワールド!

http://www.kadokawa.co.jp/bunko/bk_detail.php?pcd=200706000045

現在大人気の「らき☆すた」のノベライズ。原作の雰囲気に似た軽いノリのライトミステリ。原作者の美水かがみ自らイラストを描く。

らき☆すた」の登場人物が次々と狙われる、ゆるゆるライトミステリ。本自体が200ページを切って薄く、お約束のオチまで一気に手軽に読める。場の空気を悪くする悪者は登場しないので、普通のミステリがカルピスだとすれば、カルピスウォーターのように、あっさりさわやかな読後感。途中で22巻に飛ぶという意味不明のギャグがあるのと、原作やアニメ版に倣ったのか、竹井10日の便乗した宣伝があるのは、まあ軽く読み流せばいいだろう。密室(エレベーター)、アナグラム(トレカ)、など推理要素は一応あるが薄く、本格推理を求めると欲求不満になる。しかし、らき☆すたのキャラの雰囲気はよく出ているので、こなたやかがみたちのお芝居を観ている感覚で楽しめる。冒頭のカラーイラストのみゆきが無駄にエロイ。

関連作品

らき☆すた 夏のおきらく特集号 2007年 10月号 [雑誌]

らき☆すた 夏のおきらく特集号 2007年 10月号 [雑誌]

第十三回萌理賞・選考結果発表

結果発表 - 小説部門

萌理賞(200pt)
  • 「瞳」
    • 「いつも一人で補習を受ける女子生徒の、自分の教科以外全て高得点の成績表」とあるので、生徒が教師に恋している、というシチュエーションでしょうか。一番まとまっているので萌理賞を差し上げました。あげておいてなんですが、「華やかに咲き、儚く散る短い花の一生。」が「命短し恋せよ乙女」的なことを言わんとしているのは分かるのですが、それだけでは少し物足りなさも感じてしまいます。もちろん、だからといって例えば「余命幾ばくもない薄幸の少女」みたいな設定にしたら、それはそれであざといと思いますが、何か彼女が真剣になる理由が欲しいです。例えば、「今年限りでこの地を離れる」とか。良い作品ですが、更に魅力的な世界観を目指して欲しいと思いました。
萌賞(50pt)
  • 「下から見るか?横から見るか?」
    • 「先輩は可愛い声して横暴な人だ。」という人物造形は、萌理賞の先輩物を踏襲しています。最初の投稿者が考えた「先輩」には、何かの作品のモデルが誰かいるんでしょうか。ツンデレはツボを押さえていて、萌えは満たしています。ただ、「ばしゃーん。」「ひゃあ!」みたいに展開と文章がちょっと単純なのと、先輩物は繰り返しているので、意外感が少ないというのはあります。でも「歩き出す。先輩の袂をそっとつまむ。振り払われずにそのまま。温い風が火照る頬を撫でていく。」は良い描写だと思います。新しい先輩像を出したら萌理賞でした。
理賞(50pt)
  • 「I LLLLLLLLLLLLove You」
    • 「萌理学園の夏休みにはオプションがつく。圧縮・断片化・擬人化などがあり、個々人で選択できるのだ。」という設定が、どういうものか分かるようで分からないんですが、興味深いです。「彼との架空の旅行を夢想すると、"未来進行形わたし"の愛しいという感情の断片が集まってくる。」というのが、ちょっと詩的な表現になっていたりするのも面白い。全体的に読者が状況を想像しにくい文章なのですが、「未来進行形わたし」という言葉はイメージが湧きます。これがタイトルでもいいかも*1。設定を分かりやすく伝えたら萌理賞でした。
はて☆すた賞(20pt)
  • 「終わる夏」
    • ☆は他の作品にもついてますが、基本的に賞は重複しないので、ポイントの多い賞が優先されます。作品の方は、完全な一発ネタですが、オチの意外性に驚きます。それにしても、同じ「線香花火」と「瞳」が出てきても、これだけ違う内容になるんですね。
  • 「終わらない夏休み」
    • 夏が「終わる」「終わらない」と続きます。夏の幽霊ものは多いのですが、これもオチが意外な作品。文章は空白行の数で間を表現したり非常にシンプルですが、ラストがハッピーなのかバッドなのか微妙なところに味わいがあります。

結果発表 - 原作部門

大賞(100pt)
  • 「萌理学園入学案内パンフレット・歴史入門編」
    • 今回は原作部門二つ応募がありまして、歴史か地理かというところで悩みましたが、元々は「萌理城」だった、という成り立ちは結構魅力的だと思いました。学園の地下に昔の何かが残ってたりとか、想像が広がります。

結果発表 - イラスト部門

大賞(200pt)
  • 「ありえなくね?」
    • 自動的に大賞ですが、☆もついてますし、良い雰囲気の絵です。眼鏡っ娘が着ているフリル浴衣がメインの見所ですが、他の二人の女の子の浴衣とか、あと背景にたこやき屋のタコがあったりして、楽しい印象を与えています。

参加賞(10pt)

  • 残りの参加者全員

総評

今回は間が悪く、はてブが伸びなかったので、賞としての体裁を保てないほど集まりが悪くなるのではないかと心配しましたが、蓋を開けると結構集まったのでほっとしました。何回もやっているので宣伝しなくても定着してきたのだとすれば、支えてくれる常連さんに感謝します。それから、「円環面」は良質な作品で、萌理賞にするか迷ったんですが、前作で萌理賞を取っていて、連続受賞もアリなんですが、今回は残念ながら外しました。

次回予告

次回のお題は「秋」に関係するものですが、「読書の秋」「芸術の秋」「スポーツの秋」「食欲の秋」など、潰しが効きそうなので、「○○の秋」というのを予定しています。学園と相性が良くないので、衣服ネタのお題はなくなったのですが、「○○部」とかをお題に出すのはアリかなと考えているところです。

萌え理論Magazine - 1人1ページ出版の可能性

それから、萌理賞を本にしたらどうかというのを考えています。本当にまだアイディアの段階で、実現の可能性がかなり低いんですが、考えを上に書いておきました。さて、投稿者の方も読者の方も、お疲れ様でした。また来月の萌理賞をお楽しみに。

お知らせ

*1:いや、やっぱり元のタイトルが格好良いか。そもそもタイトルは「I'll love you.」のもじりで、未来進行形が含まれているはず

ラノベ『脳Rギュル ふかふかヘッドと少女ギゴク』

脳Rギュル ふかふかヘッドと少女ギゴク (ガガガ文庫)

脳Rギュル ふかふかヘッドと少女ギゴク (ガガガ文庫)

2007年人類は宇宙からの“脳R電波”による驚異にさらされていた。その怪電波を受信した者は脳髄を侵され、果ては人体各部から卑猥な花弁を吹き咲かせながら絶命する。脳R化した人間を追って、幻想都市、トウキョウ孤区のビルヂング群を駆けめぐる中央機密局一の危険人物、対策員“青年ボーイ”ギヤマと、夢見がちで妄想過多な天然元気女子高生対策員“少女ガール”シイ。群衆に紛れ込む脳R人間にシイが下半身で共振反応したとき、ギヤマの握る吐出ガンの引き金は下ろされる

http://www.gagaga-lululu.jp/gagaga/lineup/200707.html#01

夢野久作の「人間レコード」「少女地獄」などの原作を元に、オリジナルストーリーに「跳訳」した綺想活劇。巻頭にポスター風のイラストがあるほか、巻末の付録が充実している。

読みごたえのある力作。独特の世界観を構築している。「脳R」と書いて「ノアール」と読ませたり「ギュル」というような擬音を多用するのを始めとして、「少年ボーイ・少女ガール」という同語反復や、「懐中電話」に「ケータイ」・「三文小説」に「ラノベ」とルビを振ったり、大正浪漫風味でノスタルジックな文体(特に冒頭とか)と現代のラノベに近い文体を切り替えたり、文字の表現が賑やかで華やかだ。もちろん、スポーツ新聞の見出し的な仕様もない駄洒落遊びに堕する部分もあるし、単に読みにくい部分もあるけれど、少なくとも日本語の環境を十二分に活かしてはいる。

文字の表現だけではなく、物語の内容の方はどうか。夢野のどこか郷愁さえ感じさせる大時代な狂気を、ラノベ的な活劇にするにあたって、陰謀論的設定+エログロナンセンス=レトロ式セカイ系になった、という印象はある。しかし、序盤での囚人とのエスカレートする賭けとか、無目的で無軌道に白熱するところが、物語の大筋にあんまり関係ないけれど、引き込んで読ませる。同じガガガ文庫の「FREEDOM」が、正常で正統な大人への反抗ならば、「脳Rギュル」は任務に従っていながら、無軌道に脱線してしまう、というように対照的な構図だ。

「感想サイトが流行らない理由」の反応まとめ

発端

今月から書評を始めた。一日一冊ペースでラノベを紹介したが、記事を書く手間も意外と大きく、結構時間が掛かる。だがアフィ的には、紹介した書籍は全然売れてない。売れたのは、本家ブログに一言も紹介なくただ広告然として貼った、「らき☆すた」のDVDと「ハルヒ」のフィギュアだった。そりゃそうだよなあ…。

このように書いたところ、とても多くの反応を頂きました。書評はまだ始めたばかりなのに、大手書評サイトを始め、色々ご意見を頂けるというのは、とてもありがたいことです。本の感想より、感想の感想の方が、反響が大きいですが、サイト運営者の反応は目に見える、ということでしょう。以下では、参考にするため、整理してまとめました。

リンクまとめ

コメントまとめ

はてなブックマーク - 萌え理論Magazine - 感想サイトが流行らない理由

kanose 感想サイトはほんと継続しないと難しそう。あとラノベはもうライバル多そうだ/弾さんにネタにされていた(笑)。1ヶ月続けたぐらいで言うのは危険だな

mind 感想サイトは流行らなくても、はてスタやWeb拍手を付けると続くかも ――☆は「顔が見える」からなぁ。 //――夏休み宿題の読書感想文では「自分キャラ物語に引っ張り込め」というtipsがあった。営業力にも繋がる話?

y_kamishiro 考察サイトも流行ってないなぁ。今時、長文系サイトは流行らない。

soylent_green 一行「コードギアス」とか「涼宮ハルヒ」と書いたらアクセスが増えたこともあってばかばかしくなりました

fromdusktildawn たぶん、もっとマーケティング戦略をよく練ってみるべきなんだと思うけど。でも弾氏もいうように、そもそも感想サイトはレッドオーシャンすぎるよ。なんか切り口を変えないと苦しそうだ。

ululun 答えは簡単。ゴールが明確ではないから迷走するのである。

反応・言及の考察

  1. 最低、100冊or半年以上、継続更新しないと成果は出ない
  2. 書籍、特にラノベは低単価で、アフィリエイトに向かない

まず、頂いた反応の内、上の二つが最頻出意見ですが、私も異存ありません。本家の「萌え理論Blog」を運営していて、同じことを感じていました。

ただ、「アフィリ目的なら止めた方がいい」的論調が強かったのですが、元記事に書いたように「感想サイトは流行らなくても、はてスタやWeb拍手を付けると続くかも、という話」なんです。そこに触れている記事は(id:mindさんのコメント以外)ありませんでした。「strawman的な何か」はありますが、それも含めて「1ヶ月続けたぐらいで言うのは危険」ということなのでしょう。

さて、ライトノベルはアフィに向いてない、ということを踏まえて、それでも書評・感想サイトを流行らせたいなら、どうするかについて、頂いたご意見に多くのアイディアが含まれており、大変参考になりました。それで、具体的にこのブログの書評をどういう風にするかは、別の新しいエントリを起こしてそこで書くつもりです。

(続く)

八月編集報告

20万PV

皆様のご愛読のおかげで、20万PVを突破しました。ありがとうございます。

編集報告

(書評は振るわなかったけど)カトゆー家断絶さんに紹介されたガガガ文庫の記事のおかげ*1で、アクセスは普段より好調でした。九月からはまた書評以外の企画もスタートさせたいと思います。どういう企画になるかは、感想サイトの記事への反応の返答エントリを書きますので、そこで書く予定です。それから今月は一人で更新したので、来月から[sirouto2]は省きます。

*1:その記事一つで八月の三分の一以上、普段の一月分カウンタを回した

ラノベ『FREEDOM フットマークデイズ 1』

FREEDOM フットマークデイズ 1 (1) (ガガガ文庫)

FREEDOM フットマークデイズ 1 (1) (ガガガ文庫)

死の星と化した地球。巨大月面ドーム都市「エデン」の中、生き延びた人々にとって最上の価値は“平穏”。「みんな好き勝手やり始めたら、エデンなんてすぐ崩壊しちまう。我慢を覚えるのもオトナへの第一歩なんだろ、きっと」「オトナってつまんないねぇ」──オトナになることに全く気乗りしないカズマ、タケル、ビス。三人の微温の日々は、謎のポンコツ三輪ビークルと出会った瞬間、制御不能の加速を始めた!

http://www.gagaga-lululu.jp/gagaga/lineup/200705.html#09

日清カップヌードルのCM企画「FREEDOM」のノベライズ。構成・脚本は『交響詩篇エウレカセブン』の佐藤大。DVD版OVAの主人公タケルからカズマの視点に描き直す。今回の1巻はDVD1、2巻に相当。全3巻発行予定。

大友的SF世界観が、アニメはもちろんラノベでこうして読んでも、古びないのには驚く。ただ、登場人物の造形と心理は、古き良き青春ストーリーになってしまった印象がある。今なら、例えば「デスノート」のライト(あと「コードギアス」のルルーシュとか)のような優等生型主人公が流行だろうが、この作品はあくまで不良型主人公。不良といっても本当にDQNではなく、大人に反抗する思春期の心情が核になる。これがセカイ系になると、反抗の対象すら不明確になってしまった。本作品中、壁に落書きをするシーンで、題名の「FREEDOM」が出てくるが、それがまさに大人の管理社会(実際、不良児の烙印を押されてしまう)への抵抗なのである。そして落書きは、書き間違えから、全てを自由に、と、自由は彼方に、というダブルミーニングを帯びている。それが地球と月の関係の示唆を含んでいることは言うまでもないだろう。

関連作品

FREEDOM 1 [DVD]

FREEDOM 1 [DVD]